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糖尿病の治療と管理

糖尿病には怖い印象があると思います。しっかりと糖尿病に向き合い、きちんと治療をしていけば、糖尿病がない方達と同じように歳をとっていくことができます。
ここでは、生活習慣病である2型糖尿病の治療について説明していきます。特に2型糖尿病は生活習慣病なので、しっかりとライフスタイルを見直す必要があります。そして、必要に応じてくすりの力を借りましょう。
糖尿病の評価はHbA1cで行う
糖尿病の治療が始まったら、血糖コントロールの目標に向かって治療がうまくいっていることを確認し続けることが必要です。定期的な診察が必要です。

糖尿病の問題は合併症を引き起こすことですが、HbA1cを7%未満に維持できれば合併症のリスクが低下することが分かっています。
まずは血糖コントロールの目標は7%未満であり、そしてそれを維持していきましょう!
そしてできれば、6%未満にもっていきたいですね。
定期的な合併症のチェック
糖尿病がコントロールできれば、合併症が発生するリスクは低下します。ただし、知らないうちに進んでないかを定期的に評価することも必要です。
眼科受診
糖尿病の合併症の一つである糖尿病網膜症は、失明のリスクです。ある日突然目が見えなくなる生活が来てしまいます。
そうならないように定期的に眼科を受診し、網膜の状態を見てもらいます。状況によって治療がなされます。
腎機能の評価
糖尿病性腎症も腎不全になる大きな問題です。血液透析になると生活の制限がいろいろと出てきます。腎症が発症していないか、進行していないかを定期的にチェックします。
尿検査や血液検査が行われます。検査の頻度は腎機能障害によって決まります。
歯科受診
糖尿病になると歯肉炎になりやすくなります。歯周病がひどくなると歯が抜けます。
定期的に歯科で歯石除去などの治療をうけましょう。
歯磨きの時はやさしく歯肉をマッサージし、フロスをしてつまった食べ物を取り除きましょう。
足のセルフチェック
糖尿病性神経症が進んだり、動脈硬化が進行することで足先に問題が起きることがあります。足先の色が黒くなったり、傷がなかなか治らないことがあると足を切断するような状況になることがあります。
足先をきれいに保ち、定期的にご自身で足のおもて・うらとしっかり確認する習慣をつけましょう。
糖尿病の生活指導
糖尿病は血糖(グルコース)とインスリンのコントロールが悪くなった状態です。血糖値が上がり過ぎないようにするためには、食事療法、運動療法と薬物治療があります。
食事療法:炭水化物(ごはん、パン、めん類など)を意識する
グルコースは食べてすぐに使える非常に効率の良いエネルギー源です。そのため、身体的活動が多い日中のエネルギー源として必要な要素になります。
特に、朝や昼の食事で炭水化物を摂ることは理にかなっています。逆に夕食後に身体的活動の予定がなければ、グルコールはエネルギーとしては不要になります。
余ったエネルギーにより血糖値が上がったり、肥満につながったりします。
炭水化物は多くグルコースを含む食品です。ごはん、パン、めん類、砂糖などが炭水化物にあたります。炭水化物は、朝食、昼食に適度に摂取しましょう。夕食での、丼ものやめん類はできるだけ避けます。
ごはんであれば150gくらいを目安にしましょう。外食の際は、丼ものを食べても1人前にして、麺類も大盛りや替え玉などは控えるべきです。
いつも使っている自分のお茶碗でどのくらいご飯をついだら、150g、200gになるかを確認してみましょう。
せんべいやおかきなどは米でできてるので炭水化物に含まれます。おやつとして食べるのを控えましょう。
食物繊維が多い食品を摂ると、次の食事を食べた後の血糖値上昇も抑えることがわかりました。これをセカンドミール効果と呼びます。間食するなら食物繊維を多いのものを食べましょう。
- さつまいも:芋類でもGIがやや低め、食物繊維豊富
- ドライフルーツ
- アーモンド
- ポップコーン
- 酢昆布
- グラノーラ(小麦ふすま・ブランが多いもの)
運動療法:上がったグルコースを消費して下げる
糖尿病の患者さんは、食事により血糖値が上がりやすく下がりにくくなっています。
血糖値を下げる最も簡便な方法は、運動してグルコースを消費することです。先述のようにエネルギー効率の良いグルコースは筋肉を動かすと、まず初めに消費されます。
食事をしたら、なんらかの形で筋肉を使うようにしましょう。軽くスクワットするとかステッパーに数分間乗るなど、少しでも良いので動きましょう。
筋肉の量が増えると、血糖値を下げるホルモン(インスリン)が効きやすくなります。
糖尿病の薬物治療
糖尿病と診断された後に食事療法と運動療法は基本の治療として続けていくことが必要です。しかし、それだけでは血糖値のコントロールが難しいことも少なくありません。
血糖値が高い状態が維持されると、糖尿病の合併症が生じてしまいます。それを避けるためにはクスリのちからも借りる必要があります。
現在、糖尿病の薬物治療は下記の種類があります。
糖尿病の薬は多くの種類があります。どんな種類があって、どのように選択されるかについては以下の投稿で説明します。
この項は日本糖尿病学会のコンセンサスステートメント「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を参照しています。
インスリン
血糖値のコントロールに膵臓から分泌されるインスリンが働いていますが、インスリン分泌されない1型糖尿病の方やインスリン分泌が極端に低下している2型糖尿病の方は体の外からインスリンを注射する必要があります。
インスリンの注射には、超速効型、速効型、中間型、混合型、配合溶解、持効型溶解があります。それぞれの特徴があり、患者さんの状態によって使い分けられています。
インスリンを用いた治療は、糖尿病専門の医師に相談した方が良いでしょう。
注意すべき副作用
糖尿病の薬を使用する上で、いくつかの副作用に注意が必要です。
低血糖
血糖値が下がりすぎた状態を低血糖と言います。低血糖の症状としては、自律神経症状、中枢神経症状、大脳機能低下による症状があります。
自律神経症状
- 冷や汗をかく
- 動悸がする
- 手が震える
- 強い空腹感
中枢神経症状
- 疲労感
- 脱力感
- 眠気・あくび
- 集中力の低下
大脳機能低下
- 意識が朦朧とする
- 意識がなくなる
- 反応がなくなる
低血糖は重篤になると意識がなくなったりすることがあります。自覚症状がはっきりしないこともありますが、いつもと違うと感じたら低血糖かもしれないと疑いましょう。
下記の薬は低血糖を引きおくす可能性があります。処方を受ける際は低血糖の対処の説明も受けましょう。
- SU薬
- グリニド薬
- インスリン
消化器症状
腹部膨満感、腹痛や下痢など胃や腸の症状が出ることがあります。多くの内服薬の副作用情報には消化器症状が記載されていますが、頻度が低いことが多いです。その中でも下記の薬では消化器症状の頻度が多めです。
α-グルコシダーゼ阻害薬 | 腹部膨満感、おならが増える、腸閉塞、下痢など |
ビグアナイド薬 | 下痢、悪心、食欲不振、腹痛など |
GLP-1受容体作動薬 | 下痢、便秘、嘔気・嘔吐など |
症状が強い場合は、休薬や減少にて改善することもありますので、処方された先生と相談しましょう。
その他の副作用
SGLT2阻害薬 | 頻尿、尿路・性器感染症 |
チアゾリジン薬 | 浮腫、体重増加 |