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【不整脈とくすり】#2 抗不整脈薬の知っておきたい副作用

抗不整脈薬は、心臓のリズムを整えて症状を改善する大切な薬です。
一方で、心臓の働きそのものに作用するため、使い方や体の状態によっては副作用が起こることがあります。副作用と聞くと不安に感じるかもしれませんが、実際には多くの場合、医師が経過をしっかり確認しながら安全に使っています。

このページでは、抗不整脈薬で起こりやすい副作用や注意すべきポイントを、できるだけわかりやすく整理しました。薬の特徴を知ることは、安全に治療を続けるうえでとても役立ちます。

コンテンツ

副作用①:抗不整脈薬による不整脈

不整脈を抑えるはずの抗不整脈薬により不整脈が引き起こされる可能性があります。しかし、慎重に使用すれば問題となることは少ないでしょう。起こりうる不整脈について説明します。

心機能低下にナトリウムチャネル遮断は良くない

心筋梗塞などで心臓の働きが低下している患者さんに対するナトリウムチャネル遮断は、むしろ心室性不整脈を増やすことが知られています(CAST試験)。

ナトリウムチャネルの遮断することで心筋の伝導速度が低下します。それにより心室性不整脈が発生しやすく、維持されやすくなります。

CAST試験

目的:心筋梗塞後の心室性不整脈をナトリウムチャネル遮断薬(エンカイニド、フレカイニド)が抑制するかを確認する試験
対象:心筋梗塞後の患者さん(エントリーの詳細は省略)
介入:ナトリウムチャネル遮断薬(エンカイニドまたはフレカイニド)
対照:プラセボ(偽薬)
結果:ナトリウムチャネル遮断薬の内服で死亡率が増加した

  • N Engl J Med, 1991;324:781

ナトリウムチャネル遮断薬で心房粗動に

心房細動の発作を止めたり、発作を予防するためにナトリウムチャネル遮断薬は頻繁に使用されています。ナトリウムチャネルの遮断することで心筋の伝導速度が低下します。それによりリエントリー性不整脈が発生しやすくなります。

特に心房粗動は臨床でもよく見かけます。抗コリン作用を有するナトリウムチャネル遮断薬だと房室結節の伝導がよくなり頻拍になる傾向があるため注意が必要です。

カリウムチャネル遮断しQT時間が延長すると危険な不整脈がでることも

カリウムチャネル遮断すると活動電位の2相が延長し、不応期が長くなります。しかし、長くなりすぎると多形性心室頻拍が発生することがある。この多形性心室頻拍は自然停止することもあるが、心室細動へ移行することもある。

短時間で自然停止をしても繰り返し頻拍になることもあり、しばらく持続すると血圧が下がったり意識が遠くなることもある。

偽性心室頻拍で使えない薬がある

WPW症候群に心房細動が合併した場合に偽性心室頻拍が発生することがあります。

偽性心室頻拍の状態で使ってはいけないのは、カルシウム拮抗薬とジギタリス、β遮断薬です。これらの薬は房室結節の伝導を弱くします。結果的に副伝導路の伝導がメインになり、心室細動を引き起こす可能性があります。

偽性心室頻拍の時は、副伝導路の伝導を落とすべくナトリウムチャネル遮断薬が選択されます。

ナトリウムチャネル遮断薬はブルガダ症候群が悪化することも

ナトリウムチャネル遮断薬を使用することで、ブルガダ症候群の心電図波形が大きく変化したり、場合によって心室細動が引き起こされることがあります。

ブルガダ症候群と診断されている方は、ナトリウムチャネル遮断薬の投与はかなり慎重に判断されます。

副作用②:心機能を落とすことがある

ナトリウムチャネル遮断による心抑制

ナトリウムチャネルを抑制すると、細胞内に流入してくるナトリウムが減少します。するとナトリウムを取り込もうとナトリウム・カルシウム交換体というのが働いて、ナトリウムを取り入れます。しかし、ナトリウムと交換してカルシウムが細胞の外へ出されます。

細胞内のカルシウムが減少すると心筋が収縮する力が低下します。

カルシウムチャネル遮断による心抑制

非ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は不整脈の治療でよく使用されますが、心筋細胞の2相におけるカルシウム流入を減らします。

細胞内のカルシウムが減少すると心筋が収縮する力が低下します。

β受容体遮断による心抑制

β遮断薬は心不全でも使用される薬ですが、脈拍を落としたり心臓の収縮力を低下させる可能性があります。特に心臓の機能低下がわかっている場合は、少量から投与が開始されます。

副作用③:心臓以外の副作用

抗コリン作用による症状

ナトリウムチャネル遮断薬のうちIa群に属する薬には抗コリン作用があります。抗コリン作用により、尿の出が悪くなったり(尿閉)、緑内障が増悪することがあります。

β遮断薬によるいろいろな症状

β遮断薬を使用することで、まれですが倦怠感や抑うつ気分になることがあります。また、気管支喘息が悪化することがあります。

低血糖のリスク

ジソピラミドやシベンゾリンといった薬は、内服量が多くなると低血糖になることがあります。

アミオダロンにはさまざまな副作用がある

アミオダロンは非常に強力な抗不整脈薬であり、臨床でもよく使用されます。しかし、以下のような副作用があるため、注意しながら経過を見る必要があります。

  • 甲状腺機能異常
  • 肺疾患(間質性肺炎など)
  • 肝障害
  • 眼合併症 など
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