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関節の痛みや手足の変化…膠原病かもしれません

「膠原病(こうげんびょう)」とは、体を守るはずの免疫の働きが何らかのきっかけで自分自身の体を攻撃してしまう病気の総称です。
関節や皮膚、血管、内臓など、体のさまざまな部分に炎症が起こるのが特徴で、症状は人によって異なります。
代表的なものには、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群などがあります。
早めに気づき、必要な検査を受けることで、進行を抑えたり適切な治療につなげることができます。
今回は、膠原病を疑う症状とスクリーニングの検査について説明します。
膠原病を疑う症状
初期の段階では、症状が軽かったり、風邪のように感じたりすることもあります。
代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 関節の痛みや腫れ:手足の関節がこわばったり、朝だけ痛むことがあります
- 皮膚の発疹や変色:日光に当たると赤くなることがある
- 微熱や倦怠感:だるさが長く続く
- レイノー現象:寒さやストレスで手や足の指が白くなったり青くなったりする
- その他の症状:息切れ、脱毛、手足のしびれなど
上記の症状のうち、「関節の痛み」と「レイノー現象」について説明します。
関節の痛み・腫れの特徴
関節の痛みを訴える方は多く、その多くは変形性関節症やケガによるものですが、中には膠原病による症状の場合もあります。
以下に、膠原病による関節の炎症と、その他の関節症の特徴をまとめました。
| 膠原病を疑う | 他を疑う | |
|---|---|---|
| 全身の症状 | しばしば併発 | まれ |
| 発症の仕方 | 知らないうちに進む | 段階的 |
| 痛む関節の数 | 通常は複数におよぶ | ひとつか少数の関節 |
| 左右対称か | 多くは左右対称 | 左右対称は多くない |
| 腫れ・赤み・熱感 | ある | ない |
| 痛み方 | 安静時にある | 運動している時が痛い |
| 起床時の動かしにくさ | 1時間を超える | 30分未満 |
| 症状のピーク | 夜間〜起きた時 | 日中に時間と共に |
| 悪くなる要因 | 安静で増悪 | 活動で増悪 |
| 軽くなる要因 | 活動で改善 | 安静時改善 |
「膠原病を疑う」ような関節の痛みがある方は、ぜひスクリーニング検査を受けましょう。
レイノー現象
レイノー現象とは、寒さやストレスで手や足の指の血流が一時的に悪くなり、白や青に変化したり、しびれや冷たさを感じる症状です。
重症の場合、皮膚の潰瘍や壊死が起こることがあります。
レイノー現象は人口の約5%に見られる比較的一般的な症状であり、多くは病気を背景としない方の症状です。
しかし、まれに病気(膠原病や動脈硬化性変化など)を背景としたレイノー現象の方がいるため、スクリーニングが必要となります。
膠原病のスクリーニング検査
膠原病は症状だけでは診断が難しいため、血液検査によるスクリーニングが重要です。
主に以下の項目を調べます。
- ANA(抗核抗体):自己免疫の働きに異常があるかを調べます
- RF(リウマトイド因子):関節リウマチの可能性を確認します
- 抗CCP抗体:関節リウマチの診断に特異性が高い自己抗体で、病気の早期発見や重症度の予測に役立ちます
- 血液一般検査:炎症や貧血の有無をチェックします
- その他の抗体検査:症状に応じて追加されることがあります
これらの検査のうち、ANA(抗核抗体)とRF・抗CCP抗体について説明します。
ANA(抗核抗体)
抗核抗体(ANA:antinuclear antibody)は、自己の細胞の核内成分に対して産生される自己抗体です。
免疫の異常によって本来攻撃しないはずの自分の細胞を標的にすることで、全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする膠原病などの自己免疫疾患で陽性となることが多いです。
スクリーニング検査として広く用いられ、陽性の場合は疾患の可能性を示唆しますが、健常者でも軽度陽性となることがあり、臨床的意義があると考えられているのは一般的に160倍以上です。
抗体の染色パターンも重要です。染色パターンから疾患を絞り込み、それぞれに特異的な抗体の種類を調べることで疾患の鑑別や活動性の評価に役立ちます。
RF(リウマトイド因子)・抗CCP抗体
リウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体はいずれも関節リウマチの診断や経過評価に用いられる自己抗体です。
RFは免疫グロブリンG(IgG)に対する自己抗体で、関節リウマチの約70〜80%で陽性となりますが、加齢や他の疾患(感染症、膠原病など)でも陽性となることがあるため、特異性はやや低いとされています。
つまり、RFが陽性だから関節リウマチとは言い切れないということになります。
一方、抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)は、関節リウマチに非常に特異性が高い抗体で、発症前から陽性となることが多く、陽性だと関節リウマチの可能性が高いと言えます。
しかし、感度は70%程度であり、すべての関節リウマチの方で陽性になるわけではありません。
また、特に抗CCP抗体陽性例では将来的な関節破壊リスクが高いことが知られています。
RFと抗CCP抗体の両者を組み合わせて測定することで、関節リウマチの診断精度が高まります。
関節や朝のこわばりを自覚し、関節リウマチが疑われるかたはRFと抗CCP抗体を測定しどちらかが陽性であればリウマチの専門に紹介することになります。
スクリーニング検査で異常が見つかった場合は、専門医で詳しい検査(精査)を受けることが勧められます。
この検査は、膠原病を早めに発見するための第一歩です。
